野外スケッチを始めたいあなたへ
- nyororo@美術準備室

- 4月5日
- 読了時間: 4分

野外スケッチを始めてから、とうとう四半世紀が過ぎました。
今ほど情報がなかった2000年前後、私はたった一人で外に出かけては絵を描いていました。当時はYouTubeもInstagramもなく、いくら描いても下手くそな自分に絶望して「死にたくなった」ことさえあります。それでも、外で描く楽しさは格別でした。
今でこそ「公募展に出そうかな」などと考えたりもしますが、基本的には写生さえできれば幸せです。実は、展示にもそれほど興味がありません。
ただ戸外で過ごし、そこにいるだけで気持ちがいい。 絵を描きたい風景には、日々何度も出会います。
しかし、「その場で完璧に描き上げなければ」と気負った瞬間、心は急にしんどくなってしまうものです。「外で描いてみたいけれど、どう始めたらいいかわからない」という方に向けて、最近私が考えている「スケッチとの付き合い方」をお伝えします。
1. とりあえず、外で過ごす
まずは、外へ行ってみましょう。「描かなきゃ!」と思わなくて大丈夫です。 ただ外に出て、少し立ち止まってみてください。「あぁ、いい風だな」としみじみ味わう。それだけで十分楽しい時間になります。
2. 感想を箇条書きにする
立派な画材は必要ありません。身近な文房具でいいのです。小さなノートとペンを持って、どこかに座ってみましょう。 そして「この景色のどこが好きか」を、箇条書きにしてみるのです。
木陰がひんやりして気持ちいい
風が通り抜ける音がやさしい
晴れた光がまぶしい
波の音がなんだか、ほっとする 言葉で景色を写しとること。これだけでも立派な「観察」といえます。
3. 絵でなくてもいい。「図」から始める
いきなり絵を描くのは、案外ハードルが高いものです。そんな時は、簡単な「配置図」を描くのがおすすめです。 「砂浜が広がっている。近くには松の木があって、枯れ葉がフカフカしている。遠くに島や街が見える……」 景色を地図にするようなイメージで描き、「いつかここで描いてみたい」と一言メモを添える。その日はそれで終わりにして構いません。
4. 手頃なスケッチブックから始めよう
実は、小さいスケッチブックほど画面の構成が難しかったりします。けれど、まずは「始める」ことが何より大事です。100円ショップのノートでも、コピー用紙でも、手帳でも構いません。 一歩踏み出したなら、その時点でもうあなたは立派なスケッチャーです。 道具は鉛筆と消しゴムで十分ですが、「消せる」と思うとかえって手が止まりがちなので、個人的にはペンでいきなり描くのがおすすめです。間違えても、誰も責めたりしません。スケッチブックは、あなただけの自由な場所なのです。
5. スケッチ帖は「お守り」として持ち歩く
描いても描かなくても、とりあえず鞄に入れて持ち歩きましょう(重すぎないものがいいですね)。余裕があれば描けばいいし、描けなくてもいい。 もし空白が気になるなら、ショップカードやチラシを貼ってみるのも手です。そこに小さな言葉や絵を加えていけば、あなただけの楽しい記録になります。
6. 日付と場所を書き留める
スケッチの楽しみのひとつは「観察」です。気づいたこと、時間、場所、天気などもメモしておきましょう。 続けていると、数年後の同じ季節に、同じ場所を訪れている自分に気づくことがあります。スケッチとは、過去の自分と出会う旅でもあるのです。
おわりに
「上手に描くこと」よりも、外の空気を吸って「少し立ち止まること」が何より楽しい。その時間を重ねていくうちに、スケッチブックはあなたが歩いてきた「存在と時間の地図」になっていきます。
いつかページをめくったとき、そこには景色だけでなく、その日の風の匂いや、その時の心の動きが鮮やかに残っているはずです。
ですから、まずは描けなくてもOK! 続くかもしれないし、続かないかもしれません。でも義務ではありませんから、ゆるりとやっていきましょう。
ほら、春はもうすぐそこです。 一冊のノートを相棒に、外へ出かけてみませんか。





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